食物繊維と食欲と肥満の関係
菜食を勧めるアメリカ人医師マイケル・グレガーさんが原始人の排泄物の化石(糞石)を分析した結果からユニークな考察を行っています。
YouTube: Paleopoo: What We Can Learn from Fossilized Feces
(日本語字幕があります)
過去記事(人間の本来の食性)では、大量のコレステロールに対応できないという事実から人間の本来の食性が肉食ではないと結論づけていますが、上掲の動画では、食物繊維に焦点を当てています。
次の表は、この動画の中に出てくる食物繊維の摂取量の表を日本語に訳したものです。
旧石器時代の食事と現代の食事における食物繊維の推定1日摂取量 | |
食事パターン | 繊維含有量 |
旧石器時代の食事 | 104g |
アメリカの糞石データⅠ | >100g |
アメリカの糞石データⅡ | 150~250g |
中国農村部の食事 | 77g |
アフリカ農村部の食事 | 60~120g |
現在のアメリカの食事 | 12~18g |
アメリカにおける推奨繊維含有量 | 20~35g |
現在のイギリスの食事 | 12g |
イギリスにおける推奨繊維含有量 | 18g(最低量) |
現在アメリカでは食物繊維の摂取量は20g未満で、最低推奨摂取量の半分という状況です。
日本はどうでしょう?
大塚製薬のサイトによると、
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18 g以上、男性21 g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めています。
「平成29年国民健康・栄養調査」によれば、男女問わず全ての年代で不足しており、特に若年層での不足が顕著です。
(画像をクリックすると拡大表示されます)
となっており、アメリカやイギリスと似たり寄ったりですね。そして、目標摂取量が意外にもアメリカの推奨摂取量より少ない。
しかし、いずれの国の推奨(目標)摂取量も、上記の糞石データを見てしまうと、少なすぎるように思われます。
少なくとも100g、最大250gを1日に摂取していたということですから、目標摂取量は、最大値と比べるとわずか10分の1です。
では、どうして食物繊維が重要なのでしょうか?
それは食物繊維は腸内細菌(善玉菌)のエサだからです。
過去記事(生野菜を食べるとお腹が張る?)にも書きましたが、食物繊維は私たちのためというよりは、腸内細菌のためのものです。
上掲の動画では、繊維が入ってくると、
- 腸内細菌叢が繊維を短鎖脂肪酸に代謝
- この短鎖脂肪酸が細胞の表面にある受容体と結合し、受容体を活性化し、代謝を変化させる
- 例えば、脂肪細胞の受容体を活性化して、減量ホルモンであるレプチンの発現を増加させる(他のホルモンも同様)
と説明されています。
つまり、繊維が来ると、腸内細菌は大喜びでエサに飛びつき、その化学反応からホルモンが出る。ホルモンが出ると空腹感・食欲が減退。そして、腸内細菌が繊維の処理を終えると、ホルモンが止まり、空腹感・食欲が戻り、また食物を食べる。
上記のとおり、原始人は1日に100gの繊維を摂取しており、当時は、
食物=繊維
でしたから、繊維が来ると食欲が抑えられ、なくなるとまた食欲が出てくるというメカニズムが上手く機能していました。
でも、現代の食事ではそうはいきません。
食物 ≠ 繊維
の場合も多々あります。
繊維のない食物を食べても、空腹感は満たされません。食べても食べてもまだまだ体は欲しがります。腸内細菌のエサが来なくて、ホルモンが出ないんですから無理もありません。
こうなると、摂取カロリーが増え、体はどんどん肥大していきます。
現代的な食事では肥満にならないほうが難しいと言えるかもしれません。
ローフードを食べると痩せるというのは、生の食物の繊維で善玉菌がせっせと働いてくれ、食欲が適切に抑えられるというのも1つの要因でしょう。
世間では加熱した野菜や玄米の繊維も非加熱の繊維と同じ扱いですが、善玉菌のエサは生(なま)の植物の繊維ですから、加熱したものばかりでは善玉菌は増えるどころかどんどん減っていきます。そして、悪玉菌優勢の腸内環境になり、肥満だけでなく、様々な病気が発生します。
肥満・病気の予防には、やっぱりローフードですね。
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コメント
なるほどー、いろいろと腑に落ちました。有用な情報サンクスです。
腸内細菌には、まだまだこれから解明されることが、出てくると思います。今後の研究も注視したいと思います。
あと、ネットの健康情報でときどきみかける「腸内細菌がビタミンを合成(産生)する」というもの。
厚労省サイトにも書いてあるくらいですから、合成・産生するのは事実と思いますが、大腸ってビタミンを吸収するん? という素朴な疑問。
自分は、大腸は、水とミネラルだけ吸収するという理解だったので。
投稿: すずき | 2021年1月31日 (日) 16時20分
>すずきさん
コメントありがとうございます。
>腸内細菌には、まだまだこれから解明されることが、出てくると思います。
私もそう思います。
でも、基本的に病人・半病人(普通の人)を対象に調査・研究されていると思うので、人間の本来あるべき正しい腸内環境なんて、きちんと研究されていないというか、研究できないから、全貌は永遠に闇の中かもしれませんね。
>ビタミンの合成・産生&吸収
どうなんでしょう?
青汁仙人の森美智代さんは、特殊な腸内環境で、腸内細菌が栄養を作り出しているという調査結果があるようですが、ビタミンの吸収はどうですかね?
ネットで検索すると、水と電解質を吸収、なんて書いてありますね。
素人考えでは、大腸で作り出せるなら、吸収もできそうな気もしますが。。。
投稿: すずきさんへ | 2021年2月 1日 (月) 08時07分