やすらぎの戦士
『やすらぎの戦士』(ダン・ミルマン著/上野圭一翻訳)という本を読みました。
あまり期待していなかったのですが、非常に面白かったです。
【あらすじ】
大学生のダン(著者)は体操のスター選手で、有名人。華やかな学生生活を送りながらも、人生の意味について悩んだりしている真面目な青年。
ある日、キャンパスのそばのガソリンスタンドで、ユニークな年配の男性に出会う。その不思議な魅力に引きつけられ、交流を深めるうちに、ダンはこの男性が自分の人生の師となるべき人物であることに気づき、教えを請う。
本名を教えたがらないこの師を、ダンは「ソクラテス」と呼ぶことにした。
菜食や断食、自己啓発、自己改革、人生哲学、スピリチュアル等に興味のある人には、とても読み応えのある、濃い内容だと思います。
そして、小説になっているので、大変読みやすい。ダンとソクラテスの掛け合いが絶妙なのです。
「よかろう」彼は言った。「だが、まだわしの問いには答えてないぞ。お前はどこにいる」
「答えただろ? 猛訓練によってこんにちの自分を築いたって言ったじゃないか」
「お前はどこにいる」
「どういうことさ、どこにいるって」
「どこにいるんだ」彼はおだやかな声でくり返した。
「ここにいるよ」
「ここはどこだ」
「事務所だろ。ガソリンスタンドの!」ぼくはそのゲームがじれったくなってきた。
「スタンドはどこにある」
「バークレーさ」
「バークレーはどこだ」
「カリフォルニア」
「カリフォルニアはどこにある」
「合衆国」
「合衆国は?」
「大陸さ。西半球にあるアメリカ大陸。ソクラテス、ぼくは......」
「アメリカ大陸はどこにある」
ぼくはため息をついた。「地球だよ。まだやる気?」
「地球はどこにある」
「太陽系。太陽の第三惑星だろ。太陽は銀河の中のちっぽけな星だ。もういい?」
「銀河はどこにある」
「やめてよ」ぼくは業を煮やして目をむいた。「宇宙にきまってる」長椅子にもたれて、問答無用とばかりに腕組みをした。
「それじゃ」ソクラテスは微笑んだ。「宇宙はどこにあるんだ」
「宇宙は......。つまり、宇宙の形態に関する学説はいくつかあって......」
「そんなことは聞いてない。どこにあるんだ」
「知るもんか。答えられると思う?」
「そこだよ。答えられん。いつまでたっても答えられんのだ。それについては知ることができんのだ。宇宙のありかがわからんということは、自分の居場所がわからんということだ。じつのところ、何かがどこにあるかなんて誰にもわからんのだよ。何かが何であるのか、それがどのように生じてきたのかもわからん。謎なんだ、ダン。わしの無知はそういう理解からきている。お前の理解はそれすら知らんという無知からきている。わしはユーモアを解する馬鹿だが、お前は深刻なロバだ」
続編もあるんですが、私は、こっちの最初の物語のほうが好きですね。
また、この本は映画化されているのですが、ソクラテスの俳優さんがが私のイメージしているソクラテス像からかけはなれすぎていて、見る気になれませんでした。(映像を見たい方はこちらへどうぞ)
ソクラテスの名言は数々あるので、また別の機会に引用していきたいと思っています
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※ この本『やすらぎの戦士』は1987年に筑摩書房から刊行されましたが、その後廃刊となり、1998年に『癒しの旅―ピースフル・ウォリアー』というタイトルで徳間書店からあらためて刊行されました。しかし、現在ではこの徳間書店の本も販売されていないようです。原書『Way of the Peaceful Warrior』は1980年の初版発行以来販売され続けていて、古典的名作として今でも人気があるというのに、日本語訳はもう古本でしか手に入らないというのはとても残念なことです。
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